ピロリ菌とは?―胃がん予防のために知っておきたいこと―

「ピロリ菌」という名前を聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
ピロリ菌は胃の中に住みつく細菌で、慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍、胃がんなどと深く関係しています。
感染していても症状がないことが多いため、「自分は胃の調子がいいから大丈夫」とは限りません。
今回は、ピロリ菌とはどのような菌なのか、検査や治療についてわかりやすく解説します。
ピロリ菌ってどんな菌?
正式には「ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)」という細菌です。
胃の中は強い胃酸があるため通常の細菌にとっては住みにくい環境です。しかし、ピロリ菌は「ウレアーゼ」という酵素を使って胃酸から身を守り、胃の粘膜に長期間住み続けることができます。
ピロリ菌に感染すると胃の粘膜に慢性的な炎症が起こります。感染が長期間続くことで胃粘膜が徐々に傷み、萎縮性胃炎と呼ばれる状態へ進んでいくことがあります。

どうやって感染するの?
ピロリ菌は主に幼少期に口から感染すると考えられています。
現在の日本では衛生環境が改善しているため若い世代の感染率は低下しています。一方で、中高年以降では感染している方も少なくありません。
成人になってから新しく感染することは比較的まれとされています。

ピロリ菌に感染すると症状は出る?
ピロリ菌に感染していても、多くの場合はっきりとした症状はありません。
一方で、胃の炎症や胃・十二指腸潰瘍などを起こすと
- 胃もたれ
- みぞおちの痛み
- 胸やけ
- 吐き気
- 食欲不振
などの症状が現れることがあります。
ただし、このような症状だけでピロリ菌感染の有無を判断することはできません。

ピロリ菌と胃がんの関係
ピロリ菌について特に知っていただきたいのが、胃がんとの関係です。
ピロリ菌に長期間感染していると、慢性的な胃炎から胃粘膜の萎縮が進み胃がんが発生しやすい状態になることが知られています。
日本人を対象とした研究では、85歳までに胃がんを発症するリスクは、ピロリ菌に感染している人では感染したことがない人と比較して大幅に高くなると推計されています。
85歳までの胃がん発症リスク(日本人のデータ)
| ピロリ菌感染なし | ピロリ菌感染あり | |
|---|---|---|
| 男性 | 1.0%(約100人に1人) | 17.0%(約6人に1人) |
| 女性 | 0.5%(約200人に1人) | 7.7%(約13人に1人) |
※上記は日本人のデータを用いて出生から85歳までの累積胃がん発症リスクを推計した研究に基づく数値です。個人の胃がんリスクは、年齢・胃粘膜の萎縮の程度・家族歴・生活習慣などによって異なります。
つまり、ピロリ菌に感染している場合、感染したことがない人と比べて胃がんの発症リスクは男性で約17倍、女性で約15倍になる計算です。
そのため、ピロリ菌が見つかった場合には適切なタイミングで除菌治療を行うことが大切です。
除菌によって将来の胃がんのリスクを下げることが期待できます。
ピロリ菌はどうやって調べるの?
ピロリ菌の検査にはいくつかの方法があります。
代表的なものとして、
尿素呼気試験
便中抗原検査
血液・尿による抗体検査
胃カメラの際に組織を採取して調べる検査
などがあります。
それぞれ特徴があり、胃薬など内服している薬によって検査結果に影響が出る場合もあります。
ピロリ菌が見つかったら?
ピロリ菌が見つかった場合には、基本的に除菌治療を行います。
一般的には、胃酸を抑える薬+2種類の抗菌薬を組み合わせ、1週間内服します。

治療終了後、一定期間をあけてピロリ菌がいなくなったかどうかを確認します。これを除菌判定といいます。
一度の治療で除菌できない場合には、抗菌薬の種類を変更して二次除菌を行うことがあります。
除菌したらそれで終わり?
除菌に成功したことを確認することはもちろん重要ですが、その後の胃のチェックも大切です。
ピロリ菌が長期間住んでいた胃では、すでに胃粘膜の萎縮などが残っていることがあります。そのため、「除菌に成功すれば、もう胃がんにならない」というわけではありません。
「除菌したからもう胃カメラは必要ない」と考えず、定期的な胃カメラを受けましょう。
どんな人が一度検査を受けたほうがいい?
特に、
- これまでピロリ菌を調べたことがない
- 健診などで「萎縮性胃炎」を指摘された
- 胃・十二指腸潰瘍になったことがある
- 家族にピロリ菌感染者がいる
- 家族に胃がんになった方がいる
といった方は、一度ピロリ菌についてご相談ください。
まとめ
ピロリ菌は感染していても自覚症状がないことが多い細菌です。
しかし、長期間感染することで胃に慢性的な炎症を起こし、胃・十二指腸潰瘍や胃がんなどのリスクを高めることがあります。
大切なのは以下の3点です。
①感染しているかを知ること
②感染していれば適切に除菌すること
③除菌後も胃の状態を定期的に確認すること

これまで一度もピロリ菌を調べたことがない方や、ご家族にピロリ菌・胃がんの既往がある方は、ぜひ一度ご相談ください。
参考資料
H. pylori感染の診断と治療のガイドライン 2024改訂版
Kawai S, et al. International Journal of Cancer. 2022;150:18-27.



