- コラム
2026/09/14
インフルエンザワクチンについて 注射と鼻スプレーはどう違う?

毎年秋になるとインフルエンザワクチンの接種が始まります。
これまでは「腕に注射するワクチン」が一般的でしたが、現在は鼻の中にスプレーするタイプのインフルエンザワクチン「フルミスト」も国内で使用できるようになりました。
特にお子さんの予防接種では、
「注射とフルミスト、どちらがいいですか?」
「効果に違いはありますか?」
「フルミストなら誰でも受けられますか?」
と迷われる方もいらっしゃると思います。
今回は、従来の不活化インフルエンザワクチンと経鼻弱毒生ワクチンであるフルミストについて、それぞれの特徴とメリット・デメリットを表にまとめながら分かりやすくご説明します。
インフルエンザワクチン、注射とフルミストとの違い
そもそも、なぜインフルエンザワクチンを接種するの?
インフルエンザワクチンを接種しても、インフルエンザへの感染を100%防げるわけではありません。
ワクチンの大切な目的は、インフルエンザの発症をある程度予防し重症化するリスクを低くすることです。
インフルエンザは多くの場合数日から1週間程度で改善しますが、小児ではまれに急性脳症、高齢者や免疫力が低下している方では肺炎などを合併することがあります。
そのため流行前にワクチンを接種しておくことは大切な予防方法の一つです。
従来の「注射するインフルエンザワクチン」
一般的に「インフルエンザの予防接種」と聞いてイメージするのが、腕に注射する不活化インフルエンザHAワクチンです。
不活化ワクチンはインフルエンザウイルスの感染性をなくし、免疫をつくるために必要な成分を利用して作られています。
そのためワクチンそのものが原因となってインフルエンザを発症することはありません。
対象年齢と接種回数
国内では生後6か月以上が接種対象です。
接種回数は以下のようになります。
- 生後6か月~13歳未満:2回接種
- 13歳以上:原則として1回接種
13歳以上では添付文書上は1回または2回接種ですが、健康な成人などでは1回接種で2回接種と同等の抗体価上昇が得られるとの報告があり通常は1回接種が行われています。
注射ワクチンのメリット
一番のメリットは、接種できる方の対象年齢が広いことです。
生後6か月の乳児から成人、高齢者まで接種することができます。
また、不活化ワクチンですので免疫機能が低下している方などについても状態を確認しながら接種を検討することができます。
長年にわたり国内で使用されてきた実績があることも特徴です。
注射ワクチンのデメリット
やはり一番は注射の痛みです。
特に注射が苦手なお子さんの場合、毎年の予防接種が大きなストレスになることがあります。
また、13歳未満では原則として2回接種となるため医療機関を2回受診する必要があります。
接種後には注射した部分の痛み、赤み、腫れなどがみられることがあります。
鼻にスプレーする「フルミスト」
フルミストは、鼻の中にワクチンを噴霧する経鼻弱毒生インフルエンザワクチンです。
日本では2024年から使用されるようになりました。
従来の注射ワクチンとの大きな違いは、注射をしないこと、弱毒化した生きたウイルスを使用していることです。
左右の鼻の穴にそれぞれ0.1mLずつ、合計0.2mLを噴霧します。
対象年齢と接種回数
日本では2歳以上19歳未満が接種対象です。
つまり、成人の方が「注射が嫌だからフルミストにしたい」ということは現在の日本ではできません。
接種回数は年齢に関わらず1回です。
フルミストのメリット
最大のメリットは針を刺す必要がないことです。
「注射を見るだけで泣いてしまう」
「予防接種のたびに押さえるのが大変」
というお子さんでは大きなメリットがあります。
鼻にシュッと噴霧するだけなので、注射に比べると接種そのものに対する心理的な負担を減らせる可能性があります。
また、接種回数に関しても13歳未満のお子様では、注射タイプなら通常2回必要なところを1回で終えられるため通院回数を減らすことができます。
さらに、インフルエンザウイルスは主に鼻やのどなどの気道から体内へ侵入します。
フルミストは鼻の中に投与することで、鼻咽頭の粘膜でワクチンウイルスが増殖し、粘膜免疫や細胞性免疫を誘導するという特徴があります。
注射タイプとは免疫を誘導する仕組みに違いがあります。
フルミストのデメリット
「注射をしなくていいなら、全員フルミストでいいのでは?」と思われるかもしれません。
しかし、接種年齢として2歳以上19歳未満という制限があります。2歳未満のお子さんや19歳以上の方には使用できません。
また、フルミストは弱毒化した生ワクチンですので、接種できない方や注意が必要な方がいます。
例えば、
- 明らかに免疫機能に異常のある方
- 免疫を抑える治療を受けている方
- ワクチンの成分でアナフィラキシーを起こしたことがある方
などでは接種できません。
基礎疾患や治療内容によって判断が必要になるため、持病のあるお子さんでは接種前に医師へご相談ください。
さらに、フルミストは鼻に投与するため、接種後に
- 鼻水
- 鼻づまり
- 咳
- のどの痛み
- 発熱
などの症状がみられることがあります。
弱毒化されたウイルスを使用しているため、不活化ワクチンとは副反応の特徴が少し異なります。
厚生労働省によると、不活化ワクチンではワクチンによってインフルエンザを発病することはありませんが、経鼻弱毒生ワクチンではインフルエンザを発病することがあり、その頻度は1.8%とされています。
結局、注射とフルミストはどちらがいいの?
「どちらの方が優れている」というより、年齢・基礎疾患・注射への苦手意識などを考えて選択することが重要でしょう。
注射タイプが向いている方
幅広い年齢の方、基礎疾患などがあり生ワクチンが適さない方では、従来の不活化ワクチンが基本的な選択肢になります。
また、これまで毎年注射ワクチンを問題なく接種している場合には、そのまま注射タイプを選択することももちろん可能です。
フルミストが向いている方
2歳以上19歳未満で、特に注射が苦手なお子さんでは有力な選択肢になります。
「毎回注射で大泣きしてしまう」「2回接種の負担を減らしたい」という場合には、フルミストのメリットを感じやすいでしょう。
効果はどちらが上なの?
こちらもよく聞かれるところですが、「フルミストの方が必ず効く」「注射の方が必ず効く」と単純に考える必要はありません。
厚生労働省の審議会資料では、国内の薬事承認時にフルミストと不活化ワクチンを直接比較する臨床試験は行われていません。
一方、海外の市販後調査に基づく報告では、並者の有効性に明らかな違いはみられなかったとされています。
したがって、効果だけで決めるのではなく、年齢、健康状態、接種回数、注射への抵抗感などを含めて選ぶことが大切です。
まとめ
インフルエンザワクチンには大きく分けて、
「注射する不活化ワクチン」と「鼻に噴霧するフルミスト」
という2つの選択肢があります。
注射タイプは幅広い年齢で接種でき、長年使用されてきた実績があります。
一方、フルミストは2歳以上19歳未満が対象、注射が不要、1回の接種で終了することが大きな特徴です。ただし、生ワクチンであり、年齢や基礎疾患、治療内容などによっては接種できない場合があります。
「うちの子はどちらがいい?」
「持病があるけれどフルミストを受けられる?」
など迷われる場合には、お気軽にご相談ください。
それぞれのワクチンの特徴を理解したうえで、患者様一人ひとりに合った方法を一緒に考えていきましょう。




